寒くなると「冬が来たなぁ」と季節を感じる人も多いと思います。
しかし宅配に携わる人間がまず思うのはそこではありません。
「あぁ…冬の繁忙期が始まる…」
正直この時期は配達員にとって一年で一番気が重くなる季節です。
そして多くのお客さんは宅配の繁忙期がどれほど過酷なのかをほとんど理解していません。
「たしかに忙しそうだよね」
そんなレベルの想像をはるかに超えます。詳細は一番最後に余談として書きます。
この記事では12月の宅配現場で起こっている本当のことと、お客さんに知っておいてほしいポイントをできるだけ分かりやすく解説していきます。
なぜ12月は急激に荷物が増えるのか?
12月1日から荷物量は一気に跳ね上がります。
その理由は「複数の荷物増加イベントが重なるから」です。
- お歳暮
- Amazon・楽天などの大型セール
- りんご・みかん・野菜など冬の贈答用果物
- クリスマス商戦(おもちゃ・家電・衣類)
- ふるさと納税の駆け込み
これらは単体でも相当な荷物量です。
しかし12月はこれらが同時期に襲ってきます。
まず12月初日はお歳暮や果物贈答品が大量にロールボックスに積み込まれています。
そこに重ねて数日後にECサイトの大型セールが重なってきます。
そこに重ねてふるさと納税の駆け込みが発生します。
そこに重ねてクリスマス商戦が発生します。
※ECサイトのセールは終了しても1週間は発送遅れ等があり余波が続きます。
その結果どうなるか。
・午前中に担当エリアを1周回りきれない日が普通にある
・荷物が積み込みきれず午後便・夜便で対応
・営業所や仕分け場は段ボールの山で本気で足場もない
12月という月は現場が常に限界です。

Q&A:繁忙期に多い質問と正直な答え
Q:時間帯指定すれば確実に届きますよね?
A:確実ではありません。
もちろん「できる限り届くように動く」のは前提です。
しかし、遅れが生まれる原因は配達員だけではありません。
- 発送元の準備・梱包の遅延
- 輸送トラックの遅延や気象影響
- 仕分けセンターの処理能力の限界
- 荷物の誤着(別の営業所へ送られてしまうミス)
- 物理的に回りきれない軒数
どこか一つでも詰まれば、必ず遅れが発生します。
時間帯指定は「無料サービス」であり、絶対に守ることが保証されるものではありません。
Q:遅れるとしたら、どれくらいの遅延になりますか?
A:状況により様々で、明確な答えは出せません。
例えば雪・大雨・事故渋滞・仕分けの不具合など、現場ではコントロールできない要因が多くあります。
配達員自身もこう思っています。
「遅らせたい訳じゃなくて、遅れてしまう状況なんだ…」
それが12月の現実です。
Q:子どものクリスマスプレゼントを24日に届けてもらいたいのですが大丈夫ですか?
A:24日指定は、かなり危険です。
理由はシンプル。
全国の家庭で同じことが起こるからです。
「サンタの存在を守るために、24日に届けたい」
この想いは全国共通であり、荷物が一気に集中します。
そのため、ちょっとしたトラブルがあるだけで簡単に遅延します。
▼おすすめは「22〜23日着」に設定すること。
早めに届いても押入れに隠せば良いだけです。
遅れるよりずっと安心です。

まとめ:12月は「余裕を持つ」ことが本当に大切
12月は宅配が一年で最も混み合う時期です。
現場もお客さんも、ちょっとした思いやりと準備でトラブルを大きく減らせます。
- 大事な荷物は1〜2日早めに注文する
- 24日指定は避ける(22〜23日着が安全)
- 時間指定は「届いたらありがたい」程度で考える
これだけで、スムーズさは大きく変わります。
お互いに気持ちよく年末を迎えるためにも、ぜひ頭の片隅に置いておいてください。
【余談】委託配達員の12月繁忙期の動きをご紹介
ここでは委託配達員の1日の流れを時系列でそのまま紹介します。再配達や受け取りでイライラする前に配達員はそれ以上にイライラしているので一度読んでみてください。
見てみてください。配達員は笑顔で対応していますが目が全く笑っていません。
7:00〜10:00 センター到着 仕分けと積み込み
12月は基本的に仕分けが遅れがちになります。そのため仕分けも委託配達員が手伝います。手伝いが終わって荷物の積み込みが始まり、出発は10時近くになってしまいます。ここで体力は大きく削られ、すでに満身創痍です。
10:00〜13:30 午前指定と指定なし配達
午前指定は基本的に「12時までに配達」です。つまり10時から12時の2時間で大量の荷物を配らなくてはなりません。12月は平常時の約3倍の荷物量になるため、正直に言うと間に合うことは稀です。それでも可能な限り配達を続け、センターに戻るのは13時30分前後となります。昼食を取る余裕は皆無です。
13:30〜17:00 午後便の積み込み 午後指定と指定なし配達
ひどい時は14時近くになっても午後便が到着していないなんてことはザラにあります。そんな中、午後の荷物を積んで再出発するのは15時前後になります。軽バンには積める量に限界があり荷物が入りきらないため何度もセンターに戻る必要があります。疲労と空腹に耐えながら配達を続けますが立ち止まる余裕はありません。
17:00〜18:00 夕方の積み込み 夜配の準備
夕方に一度センターへ戻り、午後便の積み切れなかった荷物と夜配の荷物を積み込みます。支店長に状況を報告し出発は18時前後です。この時点ですでに拘束時間は長く休憩なしなので体力は限界に近づいています。
18:00〜21:00 夜配 指定なし 配達のヘルプ
夜配は受け取りやすい時間帯のため需要が高く勝負どころです。19〜21時の間に集中する依頼をこなします。自分の担当分が早く終われば他の配達員の助けに入ります。助け合わなければ終わらないからです。ここが12月の現場のすごい連帯感。私もパンク(キャパオーバー)したことがあり、軽バン1台に対して最大で4人のトラックドライバーが集結してくれたことがありました。本当に泣きそうになります。
21:00〜22:00 センター戻りと持ち戻り処理
21時過ぎにセンターへ戻り持ち戻り品の処理などの作業を行います。すべて終わるころにはおおむね22時。朝7時から22時までの長時間労働が1日として繰り返されます。
- 休憩時間:ゼロ
- 拘束時間:7時〜22時の15時間
- 稼働日数:12月は約25~26日稼働が一般的
- 荷物個数:250~300個
12月はとにかく荷物が多く体力と時間の戦いです。
配達員に対する一言の労いが大きな励みになります。受け取りの際に少しだけありがとうと言ってもらったり差し入れをもらえると救われます。