「マザーマシン」と称されるマシニングセンタは私たちの生活に欠かせない製品を生み出す機械です。
マシニングセンタ担当になった人はこう思うのではないでしょうか。
「まったく分からない」
「覚えることが多すぎる」
分かります。すごい分かります。
私もそうでした。
むしろ配属されて3日目には挫折して退職しようと先輩に話してみたら思いとどまらされ、それから楽しさを知り20年以上続けることになりました。
この機械に初めて触れる人にとってその難しさは相当なものと感じるかもしれません。
しかし複雑が故に自由度も高く、操作する人の裁量に全て委ねられるのです。
分かってくると、それが楽しくなります。
ということで、この記事で最低限の基本を身に付けましょう!
マシニングセンタ初心者の心構え
最初に
マシニングセンタの担当に配属され、最初は理解が出来ず何となくボタンを押してバリ取りばかりしているだけの人も多いかと思います。
新入社員や初心者は、何より指示されたことを正確に実行することが求められます。
しかし、1年間で図面の読み取り、段取りでは正しいクランプ方法やツールの取り付け、加工後チェックでは測定方法など、多くのスキルを習得することを求められます。
指示されたことだけを実行するのではなく、指示内容の意味や理由を理解し自ら考えて行動することが重要です。
失敗が経験となる
100%失敗もすることになります。
しかしそれは「失敗」と捉えず「勉強、経験」と捉えましょう。
マシニングセンタにおいて
「失敗なくして成長せず」
誰でも失敗します。
私の失敗をまとめてみました。
【始末書有り】
・タッチプローブを10000回転でぶん回して壊した(30万円)
・タッチプローブを早送りで追突させる(30万円)
・工具長センサに早送りで追突。工具めり込む(折れ検設定ミス)(15万円)
・横型でパレチェン時ワーク干渉、イケールが倒れ主軸にぶつかる(250万円)
【お咎めなし】
・ツールマスターに×1000でZ軸を下げそのまま工具めり込む(8万円)
・設定ミスにより工具追突(∞)
・段取中タッチプローブが出ていた事を忘れ頭をぶつけスタイラス折る(2万円)
目も当てられない失敗も中にはありますね。
しかしこれらすべて経験になり、自然と対策が出来た動きができるようになります。
「これをやるとあんなことが起こり得る」
という予測が立つようになります。
ですので失敗は経験と言い切れます。
怒られますが失敗を恐れずマシニングセンタ作業に取り組んで下さい。
仕事を覚えるコツ
仕事のことを覚えるのは最低限この3つは大事なことでしょう。
- 興味を持って取り組む
- 常になぜ?という疑問を持ち続ける
- 聞く前に自分で調べる。それで分からないなら聞く。いつまでも悩まない。
固定概念は持たないようにしましょう。
なにより柔軟な発想が一番大事です。
マシニングセンタで活躍する人になるのであれば固定概念は邪魔になります。
なぜ?という疑問を持ち、色々な思いつきにチャレンジしてみてください。
とんでもない発想がとんでもない良い結果を起こすことは多々あります。
段取り作業
工具、ツーリング、治具。
これらを正確に組み合わせて始めて良い加工ができます。
少し余裕があればクーラントに関しての知識もあると良いでしょう。
クーラントも工具の一種と捉えましょう。
段取り作業で大事な事
とにかくきれいに
主軸
- 主軸テーパ部は毎朝一回はスピンドルクリーナー等を使い、サッとキレイにすること。
- 二面拘束の場合は工具取付け都度、拘束面を指できれいに拭き取ってから工具を取り付ける。
- ツールホルダー取り付け前に、ツールホルダーシャンクテーパ部をサッとキレイにしてから主軸に取り付ける。
主軸テーパや二面拘束部分に切り屑などがついたままツールクランプすると主軸とツールホルダに傷がつき精度低下の原因になる恐れがあります。
ウエスで拭くとウエスの繊維が付着する可能性があります。
手で拭うかキムワイプを常備しておくと良いでしょう。
ツールホルダー
- シャンクテーパ部、内径テーパ部、コレット、ナット。全て洗浄剤を使いキレイに脱脂をして工具を取り付ける。
- テーパ部や二面拘束面に傷があるものは極力使用しない
内径テーパ部やコレットには小さい切り屑が付着している事が多いです。
そのまま締め付けると内径テーパ部やコレットに深い傷が付き、精度低下の原因となります。
切削液も付着していますので、洗浄剤を使い洗浄及び脱脂をした上で工具取付を行ってください。
治具やワークの取り付け
- テーブルや治具などオイルストン等を使い、軽く均す。
- 一度ウエスで拭き掃除をする。
- ウエスの繊維などが残るので最後は手で拭き取る。
丁寧に掃除をしてから取り付けをしないと治具やテーブルに傷を付けてしまいます。
最悪、治具は作り直せば良いのですがテーブルの作り直しはききません。
取り付け時は念入りに掃除をしてください。
テーブルに砥石をかけて均す際は、あまり気にしないのであればオイルストン。
精密加工機であればアルカンサスストン(白い砥石)が良いでしょう。
また、傷がつく時は感触で分かりますので違和感があったらすぐに確認をするようにしてください。
機械や工具の進化と情報
最初の頃は意識しなくて良いですが、作業に慣れてきたら徐々に意識してもらいたいことが情報の重要さです。
次のことを意識しながら取り組むと良いかもしれません。
三年一昔
機械、工具の進化スピードはとても早いです。
これは三年一昔と言われます。
覚えては新製品が登場し、知識をアップデートしCAMデータに反映させる。
その繰り返しです。
古い知識を上書きしていかなくてはいけません。
「固定概念は持たず柔軟な発想を持ちましょう」
と、前述したのはこういう意味があるのです。
JIMTOFという展示会が東京ビッグサイトで2年に1度にあります。
その都度テーマがあり各メーカーが進化した物を提案しています。
こういうところの情報は逃してはいけません。
有給を使ってでも、自費でも行くべきだと私は思っております。
なぜかというと古くなった仕事のやり方で満足していては、満足して立ち止まっている間に脱落して置いていかれてしまうのです。
何回も言います。
三年一昔です。
あまり成長していない会社にありがちなのですが、社内の流れだけで満足している傾向があります。
それは情報を疎かにし、どんどん進化していることに気づいていないからです。
そのような会社は井の中の蛙大海を知らずの可能性大です。
今、出来てるからこれでいいという思考は持たないでください。
より良い工具など常に新しいものが発表されます。
常に改善を意識しましょう。
目標達成したらすぐに次の一手を打たなくてはいけません。
情報は常に新しいものに触れておくために
- 各メーカーのWEBサイトやYOUTUBEチャンネルのチェック
- 各メーカーやメーカーの営業マン等のTwitterをチェック
- 商社の営業マンとの接触回数を増やす
- 機械技術の定期購読
- 各展示会へ極力足を運ぶ
YOUTUBEなどで様々なメーカーの出している動画を見ることによって、良い加工方法や良いクランプ方法の参考も得られることも多いです。
今はドイツ製のメーカーなども要チェックです。
営業マンは様々な会社を回っているため情報の懐が大きいです。
営業マンも分かる人間に対しては深い話をしてくれます。
私が良くしてもらっていた営業マンは「会話をしていればすぐに出来る人かどうか分かるものですよ」と言っていました。
まとめ
・初心者の心構えと学習姿勢
- 指示された作業を正確に実行しその背後にある意味や理由を理解することが求められる。
- 失敗は避けがたいがそれを経験と捉えて学び成長する機会とするべきである。
・作業の基本と継続的な改善
- 興味を持って取り組み、疑問を持続的に抱き自ら情報を探求することが重要。
- 段取り作業の精度を高めるにはツールや機械、治具と製品の嵌合部をきれいにする事が不可欠である。
・技術進化への適応:
- 技術は速いペースで進化しており、「三年一昔」という考え方で常に最新の知識を取り入れるべき。
- 展示会への参加やメーカーのウェブサイト、YouTubeチャンネルのチェックを通じて新しい情報を得ることが推奨される。
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